帰化申請の相談事例(滋賀県大津市 韓国籍)

2018-06-21

【滋賀県大津市に住む特別永住者(韓国籍)の相談者】

Q:私は、滋賀県大津市に住んでいる在日韓国人のT(21歳)の大学生です。私には日本人の交際相手がいます。今後、結婚する予定ですので、結婚までには日本の国籍を取得しておきたいと考えています。両親(父親、母親)と相談したところ、私を含め、家族全員(3人)で帰化を希望しています。家族全員で帰化申請することができますか?

A:帰化が許可されるための条件は、国籍法に規定されています。
滋賀県大津市に住んでいる韓国籍のTさんは、日本で生まれた特別永住者ですから、国籍法6条の簡易帰化が適用されます。そのため、国籍法5条の普通帰化の条件である「引き続き5年以上日本に住所を有すること」の条件を備えないときでも帰化が許可されます。それでは、順番に帰化の条件を確認しましょう。

1.「日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの」

韓国籍のTさんに詳しく事情をお伺いしたところ、家族3人全員が日本で生まれていることがわかりました。また、家族の中に、年間合計100日以上の日本出国歴もありません。

韓国籍のTさんのケースにおいては、国籍法6条の規定する「日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの」が適用されます。そうすると、韓国籍のTさん家族は、長期日本出国歴もありませんから、基本的には、日本に生活の本拠がある状態を20年以上継続されています。

以上のことから、韓国籍のTさん及びその家族(父親、母親)は、「日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの」であることが認められます。

2.「20歳以上で本国法によって行為能力を有すること」

韓国籍のTさんは、現在21歳、父親は56歳、母親は50歳です。
以上のことから、韓国籍のTさん及びその家族については、「20歳以上で本国法によって行為能力を有すること」は特に問題となりません。

3.「素行が善良であること」

帰化申請の条件である「素行が善良であること」について、まず、帰化申請者の所得税・住民税等の納税関係と年金関係が問題になります。この点について、韓国籍のTさんに事情をお伺いしたところ、Tさんの父親が自営業であること、母親は専業主婦であること、Tさんはアルバイトをしていることがわかりました。帰化申請者が会社員ではなく自営業者である場合には、確定申告書(控・決算報告書含む)、税務署発行の所得税の納税証明書(その1、その2)等の書類が必要になります。Tさんの父親に納税関係、年金関係について確認をしたところ、自営業者となって13年が経過していること、これまで赤字決算になったことがないこと等から納税関係に問題は見当たりませんでした。また、年金(国民年金)関係についても、しっかり支払いができていることが確認できました。

韓国籍Tさんのケースでは、税金(納税関係)について問題はありませんが、帰化申請者が自営業者・会社経営者であり、自営業又は会社の税金未納がある場合であっても、帰化申請までに完納すれば帰化が許可される可能性はあります。

次に、犯罪歴(実刑有罪判決、執行猶予付き有罪判決)等、交通事故・交通違反歴等について韓国籍Tさんに事情をお伺いしたところ、韓国籍Tさんに一旦停止違反2回の交通違反歴があることがわかりました。父親と母親については、犯罪歴、交通違反歴等はありませんでした。

以上のことから、韓国籍Tさん及び家族(父親、母親)は、「素行が善良であること」が認められます。

4.「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること」

帰化申請の条件である生計要件は、安定的に収入を確保することができることが重要です。韓国籍Tさんの世帯は、自営業の父親に月額約44万円の収入があり、大学生のTさんに、アルバイト収入が月額約8万円あります。母親は、専業主婦になるので収入はありません。そうすると、韓国籍Tさんの世帯収入は、月額約52万円ということになります。また、韓国籍Tさん世帯の預貯金は、合計で300万円以上あります。

生計要件に関して、韓国籍Tさんの父親が個人事業主であるので、事業の経営安定性が必要になります。通常、帰化申請をする法務局からは、営業許可証の写し、税務署収受印のある確定申告控え(決算報告書)、事業税納税証明書等の提出が求められ、直近3年間の納税状況等に問題がなければ、事業の経営安定性も問題がないと判断されます。韓国籍Tさんのケースにおいて、詳細にヒアリングを行ったところ、上記の事業の経営安定性に特に問題はないと判断しました。

以上のことから、韓国籍Tさん世帯は、「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること」が認められます。

5.「国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと」

韓国籍の方の帰化申請が法務局に受理され、その後、帰化が許可された場合には、韓国領事館に対して、原則として国籍喪失届出を申請することになります。そして、国籍喪失届出をすれば韓国籍は除籍されます。

以上のことから、韓国籍Tさん家族は、「日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと」について、問題となることはありません。

6.「日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと」

帰化が許可される要件の1つである思想要件について、韓国籍Tさん及びその家族に確認をしたところ、特に問題となることはありませんでした。

7.日本語の能力

帰化申請には、一定以上の日本語の能力が必要になりますが、帰化を希望する韓国籍Tさん家族は、全員日本で出生しています。そして、これまで長期間日本に生活の本拠がある状態を継続されていますので、韓国籍Tさん家族について、日本語の能力が問題となることはありません。

【結論】

滋賀県大津市に在住の韓国籍Tさん家族は、帰化が許可されるために必要となる国籍法に規定された要件に特に問題となるところがないため、帰化が許可される可能性が十分にあります。

 

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