帰化申請の相談事例(滋賀県大津市 中国籍)

2018-06-13

【滋賀県大津市に住む中国籍の相談者】

Q:私は、滋賀県大津市に住んでいる中国籍のAです。来日後、約6年が経過しています。
   私は、日本の国籍を取得することを希望しています。
   帰化申請することができますか?

A:帰化が許可されるための条件は、国籍法に規定されています。
   それでは、順番に帰化の要件を確認しましょう。

1.「引き続き5年以上日本に住所を有すること」

中国籍Aさんは、中国の大学を卒業した後、日本に留学して日本語学校(2年制)を卒業しています。そして、「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得し、日本の会社に就職後、会社員として4年以上勤務しています。なお、業務命令による海外出張日数は、年間30日程度です。

国籍法の規定する「引き続き5年以上日本に住所を有する」とは、5年以上日本に在留しており、かつ、就労系・身分系の在留資格を有して3年以上在留していることが求められます。また、「引き続き」とは、年間合計100日以上の出国がないことを意味します。

そうすると、中国籍Aさんは、6年以上日本に在留しており、かつ、就労系の在留資格を有して4年以上在留しています。また、仕事の関係で業務命令による海外出張がありますが、年間合計100日以上の出国はありません。

以上のことから、中国籍Aさんは、「引き続き5年以上日本に住所を有すること」が認められます。

2.「20歳以上で本国法によって行為能力を有すること」

中国籍Aさんの年齢は28歳です。

以上のことから、中国籍Aさんは、「20歳以上で本国法によって行為能力を有すること」が認められます。

3.「素行が善良であること」

帰化の要件「素行が善良であること」とは、前科があるのか、過去にオーバーステイ(不法残留)があるのか、また、交通違反、税金の未納、内縁関係等が問題になります。

中国籍Aさんに事情をお伺いしたところ、過去に犯罪歴はなく、オーバーステイ(不法残留)になったこともありませんでした。内縁関係等に関しても問題がありませんでしたが、過去に2回ほど交通違反歴(駐車違反2件)があることがわかりました。

交通違反については、「どの程度の違反までが許されるのか」については、明確な判断基準が公開されているわけではありませんから、難しい問題です。帰化の申請者が運転免許証を取得している場合には、過去5年の交通違反記録が記載された「運転記録証明書」を提出する必要があります。この「運転記録証明書」によって、スピード違反、駐車違反等の軽微な違反が数件程度であれば、帰化が許可される可能性があります。ただし、軽微な違反であっても「運転記録証明書」により、5件以上の違反がある場合には、帰化が許可されない可能性があります。また、交通違反の中でも、酒気帯び運転等により、免許停止になった場合には、免許停止から3年以上経過するまで帰化申請を待つことが望ましいです。

次に、税金の未納について中国籍Aさんに事情をお伺いしたところ、所得税、住民税等の税金の未納がないことが確認できました。また、年金に関しても、中国籍Aさんは会社員として勤務している会社で厚生年金に加入し、給与から厚生年金保険料が天引きされていることが確認できました。中国籍Aさんのケースでは、税金について問題はありませんが、もし、過去に税金(所得税、住民税、年金)等の未納がある場合でも、帰化許可申請までに完納すれば帰化が許可される可能性があります。

以上のことから、中国籍Aさんは、「素行が善良であること」が認められます。

4.「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること」

中国籍Aさんは、会社員(正社員)として、月額約24万円の給与があります。また、現在勤務している会社の勤続年数は4年以上あり、貯金額は約60万円あります。

帰化が許可される要件の1つである生計要件は、申請人が安定的に収入を確保していることが重要です。生計要件は、預貯金の金額よりも、安定的に収入を確保できることが大切になります。中国籍Aさんは、雇用形態が正社員であること、月額約24万円の給与があること、勤続年数が4年以上あること等から、預貯金の額は特に問題になることはありません。

会社員の雇用形態には、正社員・契約社員・派遣社員と様々な形態があります。会社員の雇用形態としては、「正社員」が最も安定性していると評価されますが、契約社員・派遣社員であっても、勤務期間、契約期間が長い等の場合には、特に問題になることはありません。

なお、預貯金の額が特に問題になるのは、申請人が失業中である場合、年金生活者の場合です。例えば、失業中の場合には、休職期間の生活を維持できるだけの多額の預貯金があれば、預貯金の額が少ない場合に比べて有利になります。

以上のことから、中国籍Aさんは、「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること」が認められます。

5.「国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと」

日本は二重国籍を認めていません。また、中国国籍法は、第9条において、「外国に定住している中国公民で、自己の意思によって外国の国籍に入籍し又は取得した者は自動的に中国国籍を失う。」と規定しています。

以上のことから、中国籍Aさんは、「日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと」について、問題となることはありません。

6.「日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと」

帰化が許可される要件の1つである思想要件について、中国籍Aさんに確認をしたところ、特に問題となることはありません。

7.日本語能力

中国籍Aさんは、日本語能力検定N2を取得されています。そのため、スムーズに日本語で日常会話ができ、日本語で記載された簡単な文章も読み書きすることができます。

帰化申請には、一定以上の日本語の能力が必要になります。

帰化申請者の日本語の能力によっては、日本語のテストが実施されることがあります。日本語テストでは、ひらがな、カタカナ、小学校1~3年生程度の漢字の読み書きの日本語能力があるのかどうかが判断されます。

以上のことから、中国籍Aさんは、帰化申請に求められる日本語能力があることが認められます。

【結論】

滋賀県大津市に在住の中国籍Aさんは、帰化が許可されるために必要となる日本語能力、国籍法5条1項各号に規定された要件に特に問題となるところがないため、帰化が許可される可能性が十分にあります。

 

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