任意後見人の選任の流れ
任意後見人とは
任意後見契約を締結した後、委任者である本人の判断能力が低下し、任意後見契約による保護が必要になった時点で、任意後見人になることを引き受けた者や親族等の申立てによって、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
こうして、任意後見人になることを引き受けた者(任意後見受任者)が任意後見人へ就任し、任意後見人としての職務を開始することになり、任意後見監督人の監督のもと、適切な支援活動を行っていくことになります。
任意後見人の職務内容は、委任者本人から精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分になった場合、本人の生活や療養看護および財産の管理に関する事務について委任された法律行為を、本人に代わって代理行使するということです。
そして、任意後見人は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負い、任意後見人の事務を行うにあたっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮する義務を負っています。
あなたはしっかり把握できていますか?任意後見制度の全体の流れ
任意後見契約の締結から委任者である本人の死亡までの概要
任意後見契約が発効できない!?その問題を解決する「見守り契約」
あなたはご存知ですか?任意後見契約が発行できない理由
「見守り契約」とは、任意後見契約が適切なタイミングで効力が発生するように、任意後見契約を締結してから任意後見契約の効力が発生するまでの間、委任者である本人と受任者との定期的な連絡や面談等を通じて、委任者である本人の安否、生活の状況、心身の状態等を受任者が把握することを目的とする契約です。
任意後見契約は、任意後見契約を締結した後、委任者である本人が精神上の障害により事理弁識能力が不十分になったときに効力を発生させる契約です。
そのため、任意後見契約は契約締結と効力発生との間に一定期間の経過が予定されているので、「適切な時機に任意後見契約の効力を発効できるようにすること」が求められます。
「もし、適切な時機に任意後見契約の効力を発効できるようにすること」ができなければ、判断能力が不十分となった要保護状態の本人が放置されるといった事態が起こり得ることから委任者である本人が任意後見契約を締結した意味がなくなります。
そこで、任意後見契約の効力を発効させる手続きである任意後見監督人選任の申立てをすべきか否かの判断を契約上の義務として規定する「見守り契約」がその問題を解決するために利用されています。
判断能力が低下する前から支援が必要なら「財産管理委任契約」
「財産管理委任契約」とは、委任者である本人が、受任者に対し、自己の財産の管理に関する事務の全部または一部についての代理権を付与する契約です。
「財産管理委任契約」は、精神上の障害以外の理由、つまり、委任者である本人の判断能力に問題がない時点で、高齢や病気、事故に伴う身体能力の低下や障害等の事情により、本人が満足に財産管理を行うことができず、財産管理による支援を必要とするときに、財産の管理を信頼できる任意後見契約の受任者に委ねることができるようにするために利用されています。
まだ、委任者である本人の判断能力が十分にあるから、任意後見契約をスタートさせることはできないけど、財産管理による支援を必要とする場合に利用することになります。
これだけは知っておきたい任意後見契約の基本知識
その1 任意後見契約が無効になるかも!?契約の締結能力について
任意後見制度を利用するためには、委任者である本人に契約を締結する能力が必ず必要になります。任意後見契約は、任意後見契約に関する法律に基づいて締結される「契約」ですから、利用者である委任者に契約を締結する能力がなければ、任意後見制度は利用できないことになります。この契約を締結する能力とは、自分の行為の結果を認識・判断できる精神的能力のことです。
そのため、「任意後見契約の締結を検討する委任者に契約を締結する能力があるのかどうか」の確認を行うことが任意後見契約を締結するスタートになります。
その2 代理権の対象となるのは法律行為です、事実行為ではありません
任意後見契約を利用する委任者は、信頼できる受任者に対して、代理権を付与することになります。主に、任意後見契約では、信頼できる受任者に「財産管理」と「身上監護」の2つに関する代理権を付与することになります。
ここで知っておくべきことは、任意後見契約は「代理権を付与する契約」ですから、代理権の対象となるのは、財産管理や身上監護に関する法律行為ということになり、事実行為は含まれないということです。
では、具体的に代理権を付与する対象となる「財産管理」と「身上監護」はどのようなものなのでしょうか。代理権付与の対象となる財産管理の例としては、預貯金の管理・払戻し、不動産その他の重要な財産の処分等があります。代理権付与の対象となる身上監護の例としては、介護契約、施設入所契約、医療契約の締結等を挙げることができます。
例えば、本人の食事の世話、居宅内の清掃、入浴の介助等の事実行為は、法律行為ではありませんので、任意後見契約の代理権の対象外ということになります。
その3 不正を防止する任意後見契約の監督機能
任意後見制度は、任意後見監督人が任意後見人を直接的に監督し、その任意後見監督人を
家庭裁判所が監督することで、任意後見事務の適性を確保しています。
任意後見監督人の監督機能について
任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督します。
任意後見契約に関する法律7条は、「任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、又は任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができる。」と定めています。
このようにして、任意後見監督人は、任意後見人の事務の適性を確保しています。
任意後見監督人の職務は、おおむね、次のとおりです。
①任意後見人の事務を監督すること。
②任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。
③急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。
④任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表する
こと。
家庭裁判所の監督機能について
家庭裁判所は任意後見監督人の事務を監督します。
任意後見契約に関する法律7条は、「家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務に関する報告を求め、任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況の調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができる。」と定めています。
このように、家庭裁判所は任意後見監督人に対する監督を通じて間接的に任意後見人を監督するしくみになっています。
家庭裁判所の職務は、おおむね、次のとおりです。
①家庭裁判所は、任意後見監督人に対し、任意後見契約法第7条第1項第2号に規定する報告の時期及び内容を指示しなければならない。
②家庭裁判所は、いつでも、任意後見監督人に対し、任意後見監督人の事務に関し相当と認める事項を指示することができる。
③家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に任意後見監督人の事務を調査させることができる。
④家庭裁判所調査官は、任意後見契約に関する法律7条3項の規定による任意後見監督人の職務に関する処分の必要があると認めるときは、その旨を家庭裁判所に報告しなければならない。